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救急医は眠らない!? ③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】

第1章 こちら救命救急センター

救急医は眠らない!? ③

明秀の生活は、救急医として現実的な時間と向き合うシビアなものである。重症患者を受け入れたときから時間との闘いを課せられ、一分一秒を争うような判断、決断、的確な処置、検査、手術、そして集中治療に、生死の行方がかかってくる。「明日まで様子を見てみましょう」とはいえない切迫した状態から生まれる緊張感が明秀を奮い立たせるのである。そして忙しければ忙しいほど、やる気になるというか、時間がなければないなりに「いかにして無駄をはぶこうか」などと考えるのも楽しいようだ。

手術があるという日、明秀がトイレを優先させて昼食をとらないでいると、「なんでそんなに急いでいる?」とほかの医師に聞かれ、「このあと、手術があるから」と答える。「手術を少し遅らせればいいじやない」と言われる。「手術終わったあと予定が入っているので、昼食とっている時間がない」と明秀は昼食抜きで、トイレだけに寄って手術室へ向かうのである。患者のために早めに手術を行うことは大事である。しかし、それだけの理由ではない。その仕事を終えたあとのわずかな時間を利用して趣味を実行することも明秀にとっては大事なのである。

近年、家族サービスと自分の趣味の世界を重視する救急医はふえ、確実に休みをとるかわりに、対外的な行事にはあまり参加しないという傾向もある。しかし、明秀の場合はその逆で救急一直線、前述したように休日も仕事が入ればどこへでも出かけていくので、自然に人とのつながりが広がっていったのだろう。どこにいても明秀はいろいろな人に声をかけるし、また声をかけられもするのだ。

その明秀が、実は二〇〇四年四月に六年間勤務した川国市立医療センターから青森県八戸市立市民病院へ栄転することになった。考え抜いた決断であり、次の新たなる目標を見つけたのだった。

次回に続きます…

プリベンタブルデスーある救急医の挑戦本連載は、2005年に出版された書籍「プリベンタブルデス~ある救急医の挑戦」のものであり、救急医の魅力を広く伝える本サイトの理念に共感していただいた出版社シービーアール様の御厚意によるものです。
なお、診療内容は取材当時のものであり、10年以上経過した現在の治療とは異なる部分もあるかもしれません。

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書籍連載   2017/08/21