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救急医を続けていくために(多様なキャリアの実現にむけて)

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救急医のキャリアは、いま大きく広がり続けています。第53回日本救急医学会総会・学術集会で行われた「主題関連セッション 2 救急医を続けていくために(多様なキャリアの実現にむけて)」を取材しました。このセッションでは、臨床・教育・研究・行政・地域医療・国際活動など、救急医が歩めるルートの豊かさが示されました。

救急診療は多職種・多診療科と協働する場であり、指導・調整・状況判断といったノンテクニカルスキルが自然と磨かれます。これを基盤に教育へ進む医師も多く、医学教育学を学び、研修医から看護師、コメディカルまで幅広く育成に関わっているキャリアが紹介されていました。教育は「サブスペシャリティ」となりつつあり、学習理論を踏まえた指導や、教育組織との兼任など、新たなキャリアモデルが形成されてきています。

【結語】

  • 救急医は、多職種が集う現場でリーダーとして行動し、
    教育的素養を育むことができる診療科である。
  • 医療者教育やオンラインの普及により、
    臨床医が教育をサブスペシャリティとして発展させる環境が整いつつある。
  • 救急医はその経験を基盤に、教育・研究を通じて
    次世代の育成に貢献できるキャリアを築くことができるだろう。

研究をライフワークとする救急医もいますが、特に女性医師はライフイベントによる中断や研究費使用の制約などの課題に、時として直面します。それでも、制度改革の働きかけやオンライン大学院、メンター制度、在宅での研究など、継続のための仕組みづくりが進んできています。救急科指導医に必要な業績要件の改善など、今後さらなる柔軟性が求められています。

まとめ

  • 持続可能な救急医のキャリア形成のためには、ライフイベントと学術活動を両立する必要がある
  • 若手医師がライフイベントと学術活動を両立するための制度基盤は確立されつつある
  • 制度活用に先立ち、施設での運用規定・事前整備が必要である

行政領域では、人事交流により厚労省で医系技官として働く道が開かれています。政策設計、診療報酬改定、災害対応など、救急医がもつ現場の知見が国の医療体制づくりに直接生かされるため、医療現場と行政の両側を理解した救急医は、地域医療をより良くするための貴重な存在となりえます。

医系技官、人事交流に求められること

  • 医療現場と行政の橋渡し
  • 大学等から人事交流で出向する医系技官は、過去の臨床や研究等の現場経験があるからこそ、みえること、できることがある。
  • 現場感覚・問題意識を施策に反映することを期待されている。

「平常の日常診療からわき上がってくる問題意識」
厚労省で医系技官を経験する動機として十分であり、また業務に期待されていることである。

また、救急は学びの母集団が大きく、柔軟性に富む「揺らぎを許容する専門分野」でもあります。宇宙医学、航空医学、工学など他分野との掛け合わせによる独創的キャリアも広がりつつあります。病院外に目を向ければ、診療所や在宅医療で活躍する救急科専門医も増加し、地域で総合的に患者を診る強みが生かされています。海外で医師免許を取得し、国際医療支援をしている救急医もおり、「救急 × 世界」という選択肢も現実的となってきています。

  • 診療所で活躍する救急科専門医は“少なくない”
  • 内科標榜が中心、救急を看板としている医療機関は少数
  • 厚生労働省の調査よりも、診療所で働く救急医は多い可能性
  • 本調査の限界:公開情報のみを活用している 1人で実施しており見落としの可能性あり 詳細調査の対象が全体を代表していない可能性

救急医のキャリアパスとして病院以外の勤務を提示できる可能性

今回取材を通して感じたことは、救急医には、ひとつの正解はなく、「救急を軸にしながら、何を組み合わせるか」で無限にキャリアをデザインできるということです。未来の救急医が、それぞれの価値観に合った道を自由に選び、挑戦できる時代が来ています。若い世代が、救急医学の広がる可能性にワクワクしながら、自分らしいキャリアを築いていくことを期待したいと思います。(文責:佐藤信宏、宮前伸啓)

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