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ヘリコプター搬送③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】

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第3章 救急こそ医療の原点

ヘリコプター搬送③

ドクターヘリを導入して確実に効果をあげた病院を例にとってみよう。

「完全なる救命」をめざす聖隷三方原病院(静岡県浜松市)では、おもに県西部をカバーしているが、その出動回数は全国でもトップクラスである。

たとえば、2002年度には全国で3262回出動しているが、静岡県西部地区の出動回数は560回を数え、翌年度も455回と出動回数が多い。2002年度のデータでは、119番通報から現地到着し、治療開始まで平均24分となっている。

このような緻密なプレホスピタル体制によってドクターヘリの効果が確実に上がったのである。早期の救急医療の活動に入れることは、蘇生率の向上と後遺障害の軽減に有効だということ。また、救出前の救急隊のプレホスピタル技術の向上によって、ドクターヘリ到着後の、より高度な救命活動へ移行できた。さらに、重症外傷救命のためにより多く出動して成果をあげた。

重症外傷の救命には、外傷症例を多数扱っているような実績をもつ外傷センターで治療を行うことによって救命率を高めた。

また、愛知県に導入されたドクターヘリとも良好な協力関係を保ち、必要なときには2機同時出動など、県を越えた相互応援活動も行った。

聖隷三方原病院のドクターヘリは、出動要請から3分以内に離陸して50キロ圏内であれば約15分、70キロ圏内であれば約ニト1分で現場に到着できるようにと、日標を掲げているのである。

ドクターヘリで搬送ができれば、救命率は確実に上がるだろう。たとえば、へき地などで重症の救急患者が発生した場合、救急病院まで2時間もかけて救急車で搬送するのは患者への負担が大きくて困難だが、ドクターヘリがあれば45分で搬送が可能だ。

現状では、各都道府県の病院がドクターヘリ導入に至るまでには予算上の問題などもあり、まだまだ時間がかかりそうだ。

一般市民も陸続きではヘリコプターによる搬送をイメージすることができないのかもしれないが、ヘリコプターの要請は積極的に行われるべきだろう。救命の実績がつくられていけば、ドクターヘリの普及も現実味を帯びてくるのではないだろうか。

次回に続きます…

プリベンタブルデスーある救急医の挑戦本連載は、2005年に出版された書籍「プリベンタブルデス~ある救急医の挑戦」のものであり、救急医の魅力を広く伝える本サイトの理念に共感していただいた出版社シービーアール様の御厚意によるものです。 なお、診療内容は取材当時のものであり、10年以上経過した現在の治療とは異なる部分もあるかもしれません。

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公開日:2018年1月22日