書籍連載 一覧
本連載は、2005年に出版された書籍「プリベンタブルデス~ある救急医の挑戦」のものであり、救急医の魅力を広く伝える本サイトの理念に共感していただいた出版社シービーアール様の御厚意によるものです。
なお、診療内容は取材当時のものであり、10年以上経過した現在の治療とは異なる部分もあるかもしれません。
早く続きを読みたい、書籍で読みたいという方は
http://www.cbr-pub.com/book/003.htmlや
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救急現場、密着ドキュメント!① 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
救命の最前線にいる彼らのことを 私は何も知らなかった 第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!① 午後五時すぎ、今明秀の携帯電話が鳴った。 「はい、今です。三歳ぐらいの女の子、首に絞められた跡、呼吸はあるけど、意識はない。わかりました」 救急隊…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/05/12 -
救急現場、密着ドキュメント!② 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!② 警察で事情聴取された女の子の父親が処置室にやってきて、ストレッチャー上の痛ましい娘の姿を心配そうに見た。 「お子さんはたいへん重篤な状態です。いま全力で治療にあたっていますが、まったく意識がないため、助かったとしても脳…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/05/17 -
救急現場、密着ドキュメント!③ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!③ 患者が処置台に移されると、二人の看護師が着衣を脱がせ、ズボンは手早くハサミで切って裸にする。気道確保、心電図の準備がされ、心臓マッサージが続けられる。明秀は患者の妻に、「ご主人はすでに心肺停止で蘇生は難しい状態ですが、全力を…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/05/22 -
救急現場、密着ドキュメント!④ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!④ ここ埼玉県川国市立医療センターは、 一九九四年五月に開設された総病床数五三七床という県南部の基幹病院である。 川国市は県南部、首都一五キロメートル圏内に位置し、荒川を隔てて東京都北区と隣接し、人口約四七万人。そして、川…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/05/26 -
救急現場、密着ドキュメント!⑤ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!⑤ 心肺停止で死亡した男性の遺体は処置室から隣りの部屋に移されていた。検死には家族が立ち合うことはできない。監察官が明秀から死に至るまでの経緯を聞きながら検死している間に、もう一人の監察官が遺体の写真を何カットか撮る。数時間前に…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/05/31 -
救急現場、密着ドキュメント!⑥ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!⑥ 午前四時、搬送されてきた男性は激しい腹痛と吐気で、意識はあり質問には答えられる状態だ。七転八倒するくらいの激しい腹痛といえば、私が知っている範囲では盲腸や胆石や尿道結石、腸閉塞などが思い浮かんでくる。 私も過去に何度か…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/05 -
救急現場、密着ドキュメント!⑦ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!⑦ 腸閉塞の手術は土佐医師の執刀で、明秀、麻酔医、看護師の四人が当たり、午前五時半に開始する予定で準備。カルテに書き込んでいる明秀を睡魔が襲ったのか、カクンカクンと頭が揺れている。聞くところによると、明秀は午前四時ごろに一度ダウ…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/09 -
救急現場、密着ドキュメント!⑧ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急現場、密着ドキュメント!⑧ 手術というのは患者の生死に関わる場合もあるので、必要最低限の言葉しかない厳粛なる儀式のようなものかなと想像していた。ドラマなどでは「鉗子」「メス」「ガーゼ」「血圧いくつ?」という具合だからだ。ところが、ここでは自然な会話が交…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/14 -
救命救急センターは社会の縮図① 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図① "病院は人生の縮図である"ということをよく耳にする。私自身もそれを実感させられたのは、やはり家族や親しい人たちが病に倒れて看病に当たり、さらに自分の入院体験を通してである。そこは患者それぞれの背景や死生観が浮き彫りにされ…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/16 -
救命救急センターは社会の縮図② 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図② 重症患者の輸血拒否が教えてくれるものがある。郵便配達のアルバイトをしている十九歳の男性がバイク走行中に乗用車と接触して転倒し、左側腹部に受傷。超音波検査の画像に腹腔内出血が認められ、緊急に牌臓止血手術の必要があった。とこ…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/20 -
救命救急センターは社会の縮図③ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図③ その筋の乱暴者が搬送されてくると、医師も看護師もつい身構える。入院となると、同室の患者たちは戦々恐々で、当たらずさわらずの態度を決め込むしかない。 ある日、暴力団組員が駐車中の白い車を盗んで走らせた。東京の荒川大橋…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/23 -
救命救急センターは社会の縮図④ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図④ もう一つ、暴力団がらみのエピソードがある。 ある夜、暴力団の組員同士の喧嘩で、兄貴分が弟分の胸を刺すという事件が起きた。救命救急センターに運ばれてきた患者が胸に負った傷回は大きく、血がビュービュー吹き出している状態…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/27 -
救命救急センターは社会の縮図⑤ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図⑤ これらの話とは関わりはないのだが、私はふと二十年ほど前に骨折で入院したときのことを思い出した。病室には六人の患者がいて、隣のベッドは椎間板ヘルニアを患っていた茶髪の高校生で、病室内で喫煙、飲酒をするなど病院の規則を守らな…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/06/30 -
救命救急センターは社会の縮図⑥ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図⑥ ある日、二十八歳の男性が五十五階建て高層マンションの四十三階から飛び降りた。普通に考えれば、即死である。救急隊が現場に駆けつけると、男性の身体は地上三階に張ってあった防護ネット(ステンレス製・固定)を一部破損し、さらに下…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/04 -
救命救急センターは社会の縮図⑦ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図⑦ ホームレスには青森県出身者が多いという。また、全国一の出稼ぎ県は青森県である。近年は長引く不況によって求人数に比例して出稼ぎ者数が減少しているが、遠く高度成長時代に遡ってみれば、青森から東京に出稼ぎに行った人の数はいまの…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/07 -
救命救急センターは社会の縮図⑧ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図⑧ 現在、世界のほとんどの国では「脳死は人の死」とされ、脳死下での心臓、肝臓、肺臓、腎臓などの移植が日常の医療として確立されている。しかし、日本では、臓器移植法に基づき、臓器を提供する意思がある場合にかぎって「脳死は人の死」…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/10 -
救命救急センターは社会の縮図⑨ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図⑨ 寒い日が続いていた二月の深夜、一週間後に出産を控えた女性(三十一歳)が就寝中に頭痛と嘔吐を覚え、夫が救急車を要請した。三分後、救急車が現場に到着したが、救急車到着時はすでに昏睡状態で、痛み刺激に対してわずかに手を動かす程…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/18 -
救命救急センターは社会の縮図⑩ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救命救急センターは社会の縮図⑩ このドラマチックな生命の誕生から、私たちはさまざまなことに気づかされるのではないだろうか。〈脳死を人の死〉という定義からすれば、まるで〈死者が出産した〉というイメージに陥りやすいが、日本では臓器移植が適切に行われる場合に…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/20 -
救急医になった理由① 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医になった理由① 救急現場を取材してみて、私はあらためて救急医をはじめとするスタッフの救命に当たる懸命な姿に心打たれた。さらに、想像を絶するような症例の数々と非日常の出来事を聞かされ、正直いって驚嘆するばかりだった。 「今先生はなぜ、医師にな…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/24 -
救急医になった理由② 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医になった理由② 県立青森高校に入学した明秀は大学進学については漠然としており、のんきにかまえていたようなところがあった。ただ、教科では生物が得意で成績は抜群によかった。本人も気づかないところで、医学への道の道標が立っていたのかもしれない。ただ、明…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/27 -
救急医になった理由③ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医になった理由③ 自治医大は栃木県河内郡南河内町に位置し、周辺はいまでこそ緑豊かな町並みが広がっているが、明秀が入学したころは、畑の真ん中に建っていて、「青森の田舎よりもっと田舎だった」という。自治医大は在学六年間の全寮制で、「自律協調の精神と責任…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/07/31 -
救急医になった理由④ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医になった理由④ 本州最北端の三方を海に囲まれた大間町の国民健康保険大間病院は、日本でも有数のへき地病院として完結型の治療を行い、救急のモデル病院でもあった。明秀は副院長として自治医大の同級生である官川副院長(内科と小児科)とともに二年間勤務した。…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/03 -
救急医になった理由⑤ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医になった理由⑤ そして、明秀が本格的に救急医をめざすきっかけになった二つの事件がある。一九八四年、青森県立中央病院で研修をしているときのこと、暴漢に刺された旅館の女将が運ばれてきたが、明秀は胸腔ドレーンを入れることしかできなかった。みんなで処置に当た…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/07 -
救急医になった理由⑥ 【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医になった理由⑥ 日医大の救命救急センターは、一九九三年四月より全国センターの"TheBestofBests"として厚生省第一号の〈高度救命救急センター〉の認定も受けていた。「もう、日医大に行くしかない。どんなつらい思いをしても、國松長官を助けた人たち…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/10 -
救急医は眠らない!? ①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医は眠らない!? ① 川国市立医療センター救命救急センターについては、これまでも書いてきたが、いつでも重症患者を断らない、むずかしい外科手術、完結型の救急医療をめざしている全国でも数少ない医療施設である。ここでは働く医療スタッフたちは、フル稼働だ。救急…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/14 -
救急医は眠らない!? ②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医は眠らない!? ② 子どもたちも成長するとともに、またすっかり慣れてしまったということもあるのだろうが、夜間に救命救急センターから呼び出しがかかると、 「患者さん、助かるの?」 「うん、手術するから、多分、助かるよ」 「いつ帰ってく…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/17 -
救急医は眠らない!? ③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第1章 こちら救命救急センター 救急医は眠らない!? ③ 明秀の生活は、救急医として現実的な時間と向き合うシビアなものである。重症患者を受け入れたときから時間との闘いを課せられ、一分一秒を争うような判断、決断、的確な処置、検査、手術、そして集中治療に、生死の行方がかかってくる。「明日まで…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/21 -
生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ① 間一髪の奇跡的な救命というものを振り返ってみれば、時間的側面では一秒の狂いもなく、また、尋常ではない筋書きが用意され、それらすべてがパズルのようにピタリと合致する前代未聞のドラマチックなものである。 今明秀は…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/24 -
生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ② 十二時五十分、明秀の乗ったドクターカーが現場に到着。患者が収容されている救急車に横付けされた。明秀が患者の田尻さんに接触したときは、救急隊による懸命の気道確保がなされているところだったが、左を向いても右を向いても、…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/28 -
生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ③ 止血術終了後に顔面のCT検査を行った。右眼球破裂を認めたので、明秀が眼科の医師と相談したところ、そのまま眼球を残しておくと膿が目の奥にある脳神経まで流れて脳炎、髄膜炎になるというので、即座に眼球摘出手術が行われた。…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/08/31 -
生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ④ それから一年後のまさに春の日、私は明秀とともに川国市立医療センターの食堂で田尻さん一家と会った。 田尻さんは土中から引き上げられたときの重度外傷を受けた顔面とは思われないほど回復した様子である。しかし、右眼球を失…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/04 -
生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ⑤【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ⑤ 一方、妻の由美子さんが処置室に入ったのは午後五時半だった。 「そのときは普通に治っていたから、事故当時の写真を見せられるまでそんなにひどいとは思ってなかったですね。最初、事故に遭ったときは寝たきりになってもい…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/07 -
生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ⑥【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 生き埋めだ、それ行け、ドクターカー! ⑥ 私は救命救急センターを出て、すっかり暗くなった道を急ぎ足で歩いていた。先刻の医師と患者の会話などいろいろなことが脳裏を駆け巡った。ふと、明秀が唐突に田尻夫婦のなれそめについて聞いたことを思い出した。 「熊本出…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/11 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」① 関東地方の桜の早咲きが伝えられていた二〇〇四年の春分のころ、今明秀にとって忘れられない患者の一人、石川卓くん(二十二歳)が父の徹さんに車椅子を押してもらつて救命救急センターにやってきた。卓くんは交通事故…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/14 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」② 一九九八年十二月一日午前十時すぎ、高校二年生だった石川卓くんは、コンビニに行ってくるとバイクを走らせた。少しスピードを出していた。信号が青から黄色に変わろうとする瞬間、卓くんは「あ、どうしよう」と迷った…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/21 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」③ 二〇〇〇年五月の祝日、その日も父の徹さんは卓くんに会いに国立療養所東埼玉病院へ行った。ベッドで目を開けている卓くんに新聞のテレビ番組表を見せて、「卓くん、何か見たい番組があるかな」といつものように声をかけた…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/25 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」④ 療護園滑川に入園して一年半、ここでの集団生活は卓くんをさらに明るく、一削向きにさせた。日から食べ物を入れて咀疇できるようになったことが何よりもうれしかった。食欲も旺盛で、朝、昼、晩の三食〈カナラズ クイマス…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/09/28 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」⑤【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」⑤ 卓くんは伝えたい気持ちにせかされるようにして、膝の上のキーボードを力強く打つ。どんな答えが返ってくるのか。私たちはいっせいに卓くんの左手の親指に集中した。早回の音声とともにその文字が浮かび上がる。 〈…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/02 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」⑥【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」⑥ それからニカ月後、私は川国市立医療センターで撮った記念写真をもって、卓くんが生活する療護園滑川を訪ねた。東武東上線森林公園駅から車で十分、田んぼの真ん中にある療護園滑川は二〇〇二年四月に郵便局員の岡田昭一さ…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/05 -
植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」⑦【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 植物状態から甦って「コンセンセイ コンニチハ」⑦ 卓くんの二人部屋の窓からは田植えが終わったばかりの田んぼが見える。 「目の前に田んぼが広がっていて、いい眺めですね」 〈タンボヲ ギャクニイウト ボンタ オナジヘヤノヒトハ ホンダサン ダクテン…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/12 -
心臓破裂が教えてくれたこと①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 心臓破裂が教えてくれたこと① 「おれ、退院するとき、今先生に命は大事にしてね、と言われて泣きそうになりました。一生、忘れられないです」 二十歳のときに交通事故に遭い、心臓破裂、開放大腿骨折、腹部損傷と、重篤な状態に陥った鈴木雅人さんは予測救命率一〇%…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/16 -
心臓破裂が教えてくれたこと②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 心臓破裂が教えてくれたこと② 午前八時半、右心房破裂の手術が終了した。 「胸の皮膚を縫って」 明秀は医師の一人に胸を縫合させ、その間に開腹手術を開始した。肝臓破裂部を縫って止血した。別の医師には左大腿創外固定の応急手術をさせて大腿の出血を止めた…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/19 -
心臓破裂が教えてくれたこと③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 心臓破裂が教えてくれたこと③ 「心臓のけが自体は勝負が早いのです。最初に縫う止血手術ができれば命は助かります。また、鈴木さんの場合は骨のほうも化膿しなかつた。なかにはこれだけの重傷だと熱が上がったり、足の治癒のほうもうまくいかない人もいます。幸運にもすべて…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/23 -
心臓破裂が教えてくれたこと④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 心臓破裂が教えてくれたこと④ そして、明秀はこう続けた。 「生き方について考えることは社会に出てから必要です。一日に十分でもそういうことを考える人間が増えていけば、きつと世の中よくなるのじゃないかなと思います。鈴木さんはたいへんなけがだつたけれど…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/26 -
食道破裂、10%の救命率①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 食道破裂、10%の救命率① 二〇〇〇年八月二十七日の日曜日だった。 取り次ぎ書店に勤務する佐藤勉さん(当時四十四歳)は埼玉県の鳩ケ谷ふるさと祭りで神輿を担ぐため前日から妻の実家に泊まり込み、翌朝は早起きをして準備をした。神輿は十二時にスタートした…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/10/30 -
食道破裂、10%の救命率②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 食道破裂、10%の救命率② 明秀は手術をしても助かる見込みは一〇%だと思った。破裂した部分を縫合しても合併症で死亡した患者が過去にいたので、ここは「いちかばちか」で成功率の高い手術方法でいくしかないと判断。その手術とは、胃袋を持ち上げて食道破裂の部分を覆って縫合す…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/02 -
食道破裂、10%の救命率③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 食道破裂、10%の救命率③ 佐藤さんは手術後の四日間の記憶がまったくなかったという。痛み止めのモルヒネの多量投与により、九月五日に幻覚症状が現れる。 「この病院はぼくを殺すのか」 「母ちゃん、隣りの人が七輪でごはん炊いているよ」 「月曜日には新聞社で…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/06 -
食道破裂、10%の救命率④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 食道破裂、10%の救命率④ 「この人が前に話した佐藤さんという患者さんで、一年前に手術しました。食道破裂は八センチ、あなたは四センチなんですよ。だから、大丈夫です。佐藤さんはいまこんなに元気になって仕事をしています」 明秀の真意が佐藤さんに伝わった。手術…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/09 -
2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」① 川口市立医療センター救命救急センターに搬送されてくる重症者の約二五%が交通事故の重症外傷である。交通事故による死者の数はここ十年の推移を見てみると、一九九五年には一万人を超えていたのが翌年には一…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/13 -
2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」② 一方、救命救急センターでは、救急隊からの電話を受けた今明秀が金曜日の朝のカンファランスを中止し、紙尾、平松両医師とともに、患者受け入れの準備を開始した。ショック状態にあることから暖めた輸液を大量…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/16 -
2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」③ 「最初に治すのはどっち?」 初療室に緊張が走った。紙尾医師は明秀の顔を見て指示を仰いだ。明秀の決断はこうだった。最初に心タンポナーデの緊急処置、それから左大量血胸の処置、次に気管挿管という…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/20 -
2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」④ 次は腹部超音波検査を手術室で行った。腹腔内出血の増量がないことを確認した。 「よし、それならば出血が続いている骨折の手術のほうが先だ。六時間以内に骨をくっつけたい」 特に開放骨折の場…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/27 -
2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」⑤【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」⑤ 二〇〇五年五月下旬、私は林昇さんが住む栃木県佐野市に行った。駅の改札を抜けると、林さんと長女の美智子さんの姿があった。林さんの歩行はこちらの想像をはるかに超えるほど軽快な様子、普通乗用車の運転も…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/11/30 -
2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」⑥【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 2トントラックに4WD車が突っ込んだ「お父さんを助けろ ! 」⑥ 事故から一カ月半ほど経ったある日、美智子さんは母とともにリハビリの見学をしようということで川国市立医療センター一階のリハビリ室へ行った。林さんは理学療法士について足を伸ばしたり、曲げたりのリハビ…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/04 -
用語解説① 意識レベルの評価法〜JCSとGCS【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道 ジャバン・コーマ・スケール(JCS) (3-3-9度方式による意識障害の分類) 日本で使われているJCSは、覚醒の程度によって分類したもので、分類の仕方から3-3-9度方式とも呼ばれ、数値が大きくなるほど意識障害が重いことを示している。 I 刺激しな…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/07 -
日本の救急医療とER①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 日本の救急医療とER① 私たちはいつ、どこで急病になったり災難にあったりするかわからない。自宅や職場、街、あるいは旅先でアクシデントに見舞われるかもしれない。「きょうも1日無事に終わった、やれやれ」と思っても、睡眠中に異変が起きるかもしれない。自分自身のことや…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/07 -
日本の救急医療とER②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 日本の救急医療とER② 川国市立医療センター救命救急センターでは、夜間に人工透析の治療をする病院がどこにもなくて、なんと4時間も「たらい回し」にされたという神奈川県川崎市に住む救急患者を引き受け,処置に当たったことがあった。 1999年1月、川崎市に住む…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/11 -
日本の救急医療とER③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 日本の救急医療とER③ ERといえば、真っ先に思い浮かぶのがアメリカのテレビドラマで、日本でも放送されて人気を博した。あれから10年以上がたってしまったが、私もこのドラマを興味深く観た。 毎回、次から次へと重症、軽症のさまざまな患者が搬送される救急現…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/14 -
日本の救急医療とER④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 日本の救急医療とER④ 個人的な話になるが、10年前のことである。「特に異常は見られませんから大文夫ですよ」と2度も医師に帰された女性の突然の死を思い出すたびに、私は悔しい気持ちになる。 1995年というのは、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件があって…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/18 -
日本の救急医療とER⑤【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 日本の救急医療とER⑤ クモ膜下出血については「誤診されやすい」と今明秀は言う。CT検査で出血が少ないか、認められないため異常なしと判断されてしまうことがある。クモ膜下出血の約10%近くはCTだけでは診断できない。クモ膜下出血発症後、24時間以内では、CT…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/21 -
メディカルコントロール①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 メディカルコントロール① 救急医療の歴史が古く、1歩先を行っているアメリカにはEMS(EmergencyMedicalServices)という分野があり、そこではプレホスピタルケアに付随するさまざまなことを専門に扱っている。 具体的には、救急患者に関…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/25 -
メディカルコントロール②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 メディカルコントロール② 2004年7月から、救急救命士の救急現場における気管挿管の実施が可能になった。心肺停止患者の気管に管を入れて気道を確保する気管挿管を行うことができるのは、基礎講習の受講や手術の際に全身麻酔をかけた患者に対する30症例の実習経験をもつ救…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2017/12/28 -
メディカルコントロール③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 メディカルコントロール③ 2002年月7月、埼玉県では救命率の向上を目指して、医師、消防、行政で構成した「埼玉県メディカルコントロール協議会」を設立し、その後、県内6カ所の救命救急センターを中心とした第3次救急医療圏を基礎として〈地域メディカルコントロール協議…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/04 -
メディカルコントロール④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 メディカルコントロール④ 「たらい回し」ではないが、病院に搬送されるまでの短時間に的確な処置がなされていれば、「助かったであろう」とされるような傷病がある。たとえば、交通事故などによる外傷死の中には、的確な判断と速やかな処置を施すことで防ぎ得る外傷死 = PT…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/11 -
ヘリコプター搬送①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 ヘリコプター搬送① 重症患者をヘリコプターで病院へ搬送できれば、確実に救命率が上がるというケースがある。 「過疎地や離島ならわかるが、2、30キロメートルの距離をヘリコプターで搬送するなど大げさではないか?」 そう考える人もいるだろう。しかし、一刻…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/15 -
ヘリコプター搬送②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 ヘリコプター搬送② 明秀はていねいに1つ1つを説明していった。当然、それらを聞かされた阿部さんは驚いた。眠っている間は「友達と酒を飲んでいる夢を見ていた」というほどで、日覚めてみれば集中治療室のベッドの上で身動きのとれない状態にあったというから、その驚きは想像…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/18 -
ヘリコプター搬送③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 ヘリコプター搬送③ ドクターヘリを導入して確実に効果をあげた病院を例にとってみよう。 「完全なる救命」をめざす聖隷三方原病院(静岡県浜松市)では、おもに県西部をカバーしているが、その出動回数は全国でもトップクラスである。 たとえば、2002年度には…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/22 -
救急が研修医を鍛える①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急が研修医を鍛える① いい病院、いい医師とは?日本の医療のあり方が問われ続けているのは、明らかな医療過誤(ミス)や医療事故があとを絶たないこと、しかも医療ミスを医局ぐるみで隠蔽しようとした大学病院の実態が明らかにされるなど、悪いニュースを知らされるたびに、人…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/25 -
救急が研修医を鍛える②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急が研修医を鍛える② 2004年4月、36年ぶりに新医師臨床研修制度が導入された。それまでの研修医制度では、医師免許を取得後、2年以上の臨床研修を積むことが”努力義務”だったため、研修医の約4割が研修プログラムにそった研修を受けていなかったというのが実態だっ…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/01/29 -
救急が研修医を鍛える③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急が研修医を鍛える③ こうした研修の場は病院の中だけではなく、たとえば医師たちが講師として指導にあたる独自のトレーニングコースなども研修医にとっては実践を学ぶ場である。 アメリカでは、1979年にATLS(Advanced trauma life su…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/01 -
救急が研修医を鍛える④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急が研修医を鍛える④ 2日間のPTLS講習会は、講師と受講生たちとのコミュニケーションの場でもあったと私は思う。何よりも印象的だったのは、講師たちが素になって研修医たちを受け入れ、リラックスさせて指導に当たり、また研修医たちも最初は緊張していたものの、疑間が…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/05 -
八戸市立市民病院救命救急センター①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 八戸市立市民病院救命救急センター① 東京駅から東北新幹線「はやて」で約3時間。私が青森県八戸市に行ったのは2004年10月半ば、青空が清々しい秋晴れの日だった。北へ北へと向かうほどに車窓から眺める風景は素朴な田園へと変わり、空はどこまでも広く続いていた。 …続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/08 -
八戸市立市民病院救命救急センター②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 八戸市立市民病院救命救急センター② 50歳になったときに人1倍の気力と体力は持続できても、夜になると判断がにぶって、あるいは部下にまかせることになるかもしれない。また、看護師はそうした弱さを医師に感じたら遠慮することもある。明秀は年齢を重ねるごとに、「自分はま…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/13 -
八戸市立市民病院救命救急センター③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 八戸市立市民病院救命救急センター③ 私は院内をひととおり見学してから夕食用の弁当を売店で買い求めて初療室に戻ると、時刻は6時を回っていた。 階段から転げ落ちたという若い女性が運ばれ、整形外科医、研修医2人が初療に当たっていた。患者の意識ははっきりしており…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/15 -
八戸市立市民病院救命救急センター④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 八戸市立市民病院救命救急センター④ 翌日は午前9時すぎに病院に到着。 昨夜、私がホテルに戻ったあとに搬送されてきた73歳の男性は泥酔状態で転倒し、X線検査の結果、脊髄損傷と診断される。脊髄損傷を起こすと、最初に脊髄ショックがあり、それは24時間から48時…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/19 -
八戸市立市民病院救命救急センター⑤【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 八戸市立市民病院救命救急センター⑤ 三戸郡倉石村は、いまでこそ温泉や果樹園、「ふれあい体験の郷」、霜降り肉の「倉石牛」などの特産品が登場し、村おこしも盛んで多少はにぎやかになったが、当時は人口4000人、食堂もスナックもない、あるのは農協と郵便局だけという過疎…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/22 -
八戸市立市民病院救命救急センター⑥【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 八戸市立市民病院救命救急センター⑥ 明秀は、患者の身の上話に相槌を打っている。そばで見ていると、まるで世間話でもしているような光景である。 高気圧酸素治療室を出ると、明秀は言った。 「患者さんの根本にある悩みを具体的に取り除いてあげることはできない…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/02/26 -
救急医学教育はまちぐるみ?①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急医学教育はまちぐるみ?① 救命救急センター所長としての今明秀は、週に3度の当直を含めた忙しい日々を送りながら救急医学教育に力を注いでいる。その1つに、看護師のためのステップアップ教育がある。院内の看護職員約450人を対象にしたAED(自動体外式除細動器)の…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/05 -
救急医学教育はまちぐるみ?②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急医学教育はまちぐるみ?② アメリカでは、一般の人も除細動ができるように人の集まる場所にはAEDが置いてある。日の前で倒れた人に市民が電気ショックを行い、そのうち7割も命が助かっていると言われている。日本でも市民がこうした講習を積極的に受けておけば、心臓の突…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/08 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援 ヘ① 「災害は忘れたころにやってくる」の諺があるが、ここ10年の日本を振り返っても次から次ヘと災害が発生している。 1995年に起きた阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件はいまだ人々の記憶にくっきりと残っているという…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/12 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援 ヘ② 28日朝の病院臨時管理会議で医療班出動地を川口町と決定。青森県と新潟県からの要請を受け、災害拠点病院として出動することになった。 午前1一時、看護師2人、薬剤師1人、事務員1人の編成チームがヘリコプターで震源…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/15 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援 ヘ③ 「何とか力になりたいが、指揮系統が違うのですぐには行動できない。地元の小千谷市消防が向こうにいるから、頼んでみましょう」 ほどなく、小千谷市消防から、川口町まで送ってくれると いう返事をもらった。…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/19 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ④【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援 ヘ④ 10月29日(金) ◎心肺停止 6時に目が覚めた。事務の官武さんはすでに寝袋をたたんでいた。隣の看護師神田さんはまだ寝ている。朝食は7時ころのはず、まだ寝ていよう。 昨夜は、当直明…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/22 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑤【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑤ 診療室は、体育館の片隅に、日隠しを置いて設営した。裏には階段があり、ジュラルミンケースを並べられる。日陰は寒いが、太陽が差し込む窓越しは日中は暖かい。いい場所を提供してもらつた。救援物資から石油ストーブを…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/26 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑥【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑥ ◎医師会長との出会い 午後6時半からのミーティングにはぎりぎり間に合った。ミーティングには地元開業医の内田先生もいらしていた。当初、災害医療班とまったく連携がなかった。私は本日の午後、内田先生に面談…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/03/29 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑦【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑦ 10月31日(日) ◎尿路感染症 風邪が多い。23日夕方の震災で、この町の住民のほとんどは広場で野宿している。建物には恐ろしくて近寄れない。圧死者も出ている。小学生も亡くなっている。2曰くらい…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/02 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑧【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑧ 11月1日(月) ◎魚沼病院へ転送 本日より堀内町、小出町などが合併し魚沼市になるそうだ。しかし、これらと接する川口町は何が理由か知らないが、単独で町を維持するそうだ。平時では5700人の人口…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/05 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑨【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑨ 11月2日(火) ◎インターネット不通 湯沢町は、群馬県とトンネルをはさんだ新潟県の最南端だ。川端康成の小説でも有名な雪国で、魚沼産コシヒカリの産地だ。新幹線は運がいいことに、ここまで通じてい…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/09 -
救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑩【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第3章 救急こそ医療の原点 救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑩ 新潟中越地震から9カ月が過ぎた。豪雪に見舞われ長かった冬を越え、人々はいま復興をめざして頑張っている。 今明秀の5日間にわたる救援日誌を読むと、避難所で生活する住民たちの、地震で受けたショックと不安、物資・食料…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/12 -
エピローグ①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
エピローグ① 2005年5月、私は再び八戸市立市民病院救命救急センターを訪れた。今明秀がセンター長に赴任して1年が経過していた。 青森県の救急医療の進展をめざしてやってきた明秀の八戸における活動は「ゼロからのスタート」、病院内外の救急活動の基礎固めに明け暮れる忙しい1年だった。 明…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/16 -
エピローグ②【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
エピローグ② 八戸市立市民病院は臨床研修指定病院である。明秀は着任2年目の4月から研修および救急指導責任者になった。研修プログラムは、初期研修1〜2年の前半で必修科をローテートした後に、2年目後半で将来の方向は変更可能で、さらに力をつけた3年目には専門領域の選択が研修医たちを待っている。内科系…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/19 -
エピローグ③【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
エピローグ③ 医療については患者としての経験と見聞きした知識だけの私が、1人の救急医、自治医大出身の今明秀をとおして日本の救急医療を知りたいという思いが膨らみ、川国市立医療センター救命救急センターを訪ねたのが2004年2月のことだった。そして、初めて救急現場に足を踏み入れて、救命のかたちあるい…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/23 -
対談◇國松孝次・今明秀 ①【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
対談◇國松孝次・今明秀 ① 救急ヘリコプターの進展のために 元警察庁長官の國松孝次さんは特定非営利活動法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM‐Net)の理事長として、ヘリコプター救急活動の重要性を説き、普及活動を進めている。1995年3月、國松さんは凶弾に倒れ、搬送先の日本医科大学附属病院…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/04/26 -
対談◇國松孝次・今明秀 ②(最終回)【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
対談◇國松孝次・今明秀 ② 日常的にヘリコプターの活用を 今 災害時におけるヘリコプターの活用は重要ですが、まず、国松さんが警察庁長官のときに起きた阪神淡路大震災において、ご苦労されたこととはどんなことですか? 國松 あのときは現地にも行きましたし、警察にできることを一生懸命にやり…続きを表示
[ 書籍連載 ] 2018/05/01