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救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑨【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】

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第3章 救急こそ医療の原点

救急と災害医療―新潟中越地震、緊急救援ヘ⑨

11月2日(火)

◎インターネット不通

湯沢町は、群馬県とトンネルをはさんだ新潟県の最南端だ。川端康成の小説でも有名な雪国で、魚沼産コシヒカリの産地だ。新幹線は運がいいことに、ここまで通じている。この先は、ローカル線も、新幹線も不通だ。

昨夜は夕方7時すぎに、越後湯沢駅で帰りの新幹線の切符を買うことができた。その日のうちに八戸に行き着かない。大量の荷物をかかえての宿泊所探しはつらいので、駅前の直近の旅館に入った。

温泉に1時間入った。体を2回石鹸で洗った。隣の中居薬剤師も同じ。そのとなりの神田看護師は久しぶりにひげをそった。宮武さんは露天風呂からなかなか出てこない。それぞれゆったりと湯につかっている。救護所の垢をすっかり落とすことができた。

湯沢町の夜は1度も揺れなかった。ニュースでは川口町の地震を伝えている。やはり、昨夜も揺れたようだ。我々は震度4くらいでは驚かなくなった。特に神田看護師は、すでに揺れをほとんど感じない体になっている。まるで海を航海するときに、2日目から船酔いがなくなるように。睡眠も十分とり、万全の体調となった。

新幹線は各駅停車が運行している。雨の新潟県を去り、群馬県に入ると別世界だった。都市生活は地震と関係なく、早いスピードで回っているようだ。

インターネットは31日午後からつながらなくなった。どのチームも同じだ。湯沢町まで来て試したが、やはり不通だった。ホテルに問い合わせたが、同じころより通じないようだ。災害時は携帯電話と固定電話、衛星電話、無線など通信の手段を持つことは大事だ。万能と思われたインターネットが使えなくなることがわかった。

今回の持ち込んだパソコンは、青森県広域災害救急医療情報システムの備品だ。モバイルのインターネットができるが、旧型のため少し不便だった。また衛星電話も大型だった。まさかのための災害備品ではなく、常に使う災害備品として更新すべきだ。しかし、災害用の緊急回線を使用している災害用インターネットがどうしてつながらないのか不思議だ。

体はきれいになったが、ユニフォームは臭いままだった。八戸についてこの災害服が洗濯から帰ってくるころ、日常の救命救急センター業務に戻っているはずだ。留守番をしてくれている病院職員に感謝。ヘリコプターを出してくれた青森県と海上自衛隊に感謝。出動準備をしてくれた管理課、看護部に感謝、当直を代わっていただいた菊池、相馬両先生に感謝。緊急自動車登録の努力をしてくれた八戸市と警察に感謝。危険な任務に協力してくれた中居、前田、神田、宮武チーム員に感謝。

この任務が次の災害救護と災害行政に役立つことを祈り、このレポートの筆を終える。

次回に続きます…

プリベンタブルデスーある救急医の挑戦本連載は、2005年に出版された書籍「プリベンタブルデス~ある救急医の挑戦」のものであり、救急医の魅力を広く伝える本サイトの理念に共感していただいた出版社シービーアール様の御厚意によるものです。 なお、診療内容は取材当時のものであり、10年以上経過した現在の治療とは異なる部分もあるかもしれません。

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公開日:2018年4月9日