用語解説① 意識レベルの評価法〜JCSとGCS【プリベンタブルデス ある救急医の挑戦】
第2章 救命、そして再生への道
ジャバン・コーマ・スケール(JCS)
(3-3-9度方式による意識障害の分類)
日本で使われているJCSは、覚醒の程度によって分類したもので、分類の仕方から3-3-9度方式とも呼ばれ、数値が大きくなるほど意識障害が重いことを示している。
I 刺激しないでも覚醒している〈一桁の数字で表現〉
1 だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない
2 時、場所または人物がわからない
3 名前または生年月日がわからない
II 刺激すると覚醒する〜刺激を止めると眠り込む〈二桁で表現〉
10 普通の呼びかけで容易に開眼する
(合目的な運動〈たとえば、右手を握れ、離せ〉をするし言葉もでるが、間違いが多い)
20 大きな声または体をゆさぶることにより開眼する
(簡単な命令に応ずる、たとえば離握手)
30 痛み刺激と呼びかけを繰り返すと、かろうじて開眼する
III 刺激しても覚醒しない〈三桁の数字で表現〉
100 痛み刺激に対し、はらいのけのような動作をする
200 痛み刺激に対し手足を動かしたり、顔をしかめる
300 痛み刺激に反応しない
付 ”R”:不穏 ”I”:糞尿失禁 ”A”:自発性喪失
例 30-R 3-I 3-A など
グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)
アメリカで一般に使われている表し方。開眼、言語反応、運動反応の三つについて、点数化をして表したもので、点数が低いものほど、意識障害が重いことを示している。15点満点(正常)で、最低点は3点で、深昏睡という。一般に8点以下を重症として取り扱う。
E:開眼 (eyeopening)
自発的に…4
言葉により…3
痛み刺激により…2
開眼しない…1
V:一言語音声反応 (verbalresponse)
見当識あり…5
混乱した会話…4
不適当な単語…3
無意味な発声…2
発声が見られない…1
M:運動反応 (bestmotorresponse)
指示に従う…6
痛み刺激部位に手足を持ってくる…5
痛みに手足を引っ込める(逃避屈曲)…4
上肢を異常屈曲させる(除皮質肢位)異常な四肢屈曲反応…3
四肢を異常進展させる(除脳肢位)…2
まったく動かさない…1
合計(正常)…15
記載例 / E3 V3 M5 = 11
JCSの意識判定は、救急隊や神経内科医がよく使い、GCSは脳外科や外傷診療によく使う。
脳ヘルニア
頭蓋骨によって囲まれた脳は、頭蓋骨と背骨の連絡部の大後頭孔が唯一の外への開口部である。この開国部付近にはすき間が存在し、瞳の大きさと眼の動きを調節する動眼神経が走っている。外傷や脳出血などで、脳の容積が増加すると圧排された脳組織が、このすき間へ移動し、脱出しそうになる。この時にすき間を走っている動眼神経が強く押される。そうすると、瞳孔の大きさは拡大し、光での反射はなくなる。このすき間に脳が出っぱることを「脳ヘルニア」という。脳幹という呼吸や血圧、意識状態に関係する部位を圧迫するため、意識障害、瞳孔不同、対光反射異常、片麻痺、呼吸障害などが起こる。
次回に続きます…
本連載は、2005年に出版された書籍「プリベンタブルデス~ある救急医の挑戦」のものであり、救急医の魅力を広く伝える本サイトの理念に共感していただいた出版社シービーアール様の御厚意によるものです。 なお、診療内容は取材当時のものであり、10年以上経過した現在の治療とは異なる部分もあるかもしれません。
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