ドキュメント・ドクターヘリ
昨夜の雨で、湿度が上がっています。天気は、小雨です。
その日は出動ないのかなと思っていた午後3時54分にドクターヘリ出動要請が来ました。
砕石場で労災事故が起こりました。ヘリコプターは、出動要請を受けてから3分後に離陸しました。目的地は、山間にある採石場です。
時速200kmのヘリコプターは離陸して5分で現場上空に到達しました。川の近くの広い採石場に、赤い消防車と白い救急車が止まっています。
ドクターヘリには、機長と整備士が前席に乗っています。後ろの席には、医師2名と看護師1名が乗ります。医師1名は救急科専門医、そしてもう一名は救急科専攻医です。それから患者用のベッドが備えられています。機内では、自由にヘッドホーンとマイクで会話ができます。消防や、病院、飛行場とは無線で話できます。
整備士は無線で、消防と交信し、着陸地点を打ち合せしました。ヘリコプターは高度を落とします。
途中でいったん高度を保ち、もう一度目的地に電線や、障害物がないことを確認します。その日は運がいいです。雨のせいで、砂に湿気があり、埃と煙が上がりません。
ヘリコプターが着陸するとすぐに、エンジンが切られます。惰性で回る天井のプロペラに注意しながら、私たちは頭を下げて機外に出ました。すぐに消防隊が案内してくれます。危険な現場で医療活動する場合は、消防隊と同じように、ヘルメットと、安全靴、つなぎ服を着用します。
急な階段を降りて、砂埃がまっている作業場に入ります。裸電球と日光だけでは薄暗い室内です。救急隊長は大声で、こっちだと叫びます。このような作業事故現場は、危険に満ちています。天井や周りを注意深く観察しながら、私たちはゆっくりと患者に近づきます。
私たちは、彼の異常に一目で気づきました。右腕がありません。顔は苦痛に満ち、脂汗をかいています。声は弱く呼吸は速いです。近くに、数分前まで彼の一部分だった右腕が、ビニール袋につめられてあります。床には、ベルトコンベヤからつながる血痕が落ちています。
患者の左腕の脈は弱く早い。
「ショックだ!酸素は続けてください。左手から、点滴を入れます。太い針で緊急輸液を全速力で開始します。」
この瞬間、この砂埃まみれの作業場が、病院になります。ケガが腕だけか、胸も怪我しているかを超音波と聴診器、酸素飽和度計で調べます。痛み止めの麻薬を注射します。
私は、立ち上がり、携帯電話で救命救急センターのコードブルーを鳴らします。
「砕石場の患者。ショック状態。切断面は止血済み。酸素投与と、輸液全開で運びます。手術室の用意をお願いします。」
患者は、ドクターヘリに収容されました。
現場を離陸して、わずか5分で、オレンジ色の病院ヘリポートに到着です。救急室では、救急科医師、整形外科医師、放射線技師、看護師、麻酔科医師の診察と治療が開始されました。
すばやい判断と連携で、患者はアッいう間に手術室に運ばれました。その7時間半後、彼の右腕は再びもとの位置にくっつき集中治療室に入院しました。
ショックの治療、すばやい搬送。そして正確な手術。ドクターヘリとその仲間たちの連携の勝利です。
救急科専攻医はドクターヘリやドクターカーで現場に出動する研修プログラムが選べます。
(写真は記事の内容と直接的な関係はありません)