社会貢献
救急医の仕事は「医療だけではない」
救急医の仕事そのものが社会貢献なんだろうと思う。
救急外来で救急搬送患者を受ける。重症、軽症、老若男女、朝から晩まで実に様々な患者さんが搬送される。救急外来は社会の縮図とも言われ、救急外来にいると現代の社会的課題をまじまじと感じることができる。自由気まま、主治医や家族の言葉にも耳を貸さず、毎日好きなように生活して、挙句の果てに困ったら警察か救急車を呼ぶ、そんな人も珍しくはない。そのような場面に直面すると、救急医の仕事は「医療だけではない」と実感する。
医学の十分な知識と手術やカテーテルを使いこなす凄腕をもっていても、治療を受ける患者さんが「その気」にならなくては、治療は上手く進まない。「せっかくよくなって退院したのに・・・」そんな主治医の嘆きやつぶやきを救急外来で聞くことも少なくはない。こういった患者さんを社会的にどう救ってあげられるのか。悩みながらも目の前には再び患者がやってくる。社会のセーフティーネットとして機能する救急外来での仕事は、まさに社会貢献のひとつかもしれない。
社会に大きく貢献できる仕事 それが救急医
高度な診断、治療の技術が発達している現代においても、その恩恵を受けることなく失われる命もある。長年の引きこもりの末に自宅で孤独死する人、公園や路上で倒れ、そのまま息を引き取る人、自分で自分の命を絶つ人・・・。色々な人生を送った人の最期を看取るのもまた、救急外来である。
一人暮らしの生活者が増えるなか、最近は民生委員など行政の方々に加え、町の新聞屋さん、宅配の方々も住民の安否確認に一役かっている。以前は1週間ほど音沙汰がなければ警察や消防へ通報されていたのが、最近は2-3日で通報されるようになってきた。おかげ様で低体温症や脱水症で動けなくなっている患者さんが間一髪で救急搬送されるようにもなってきた。
地域のつながりが希薄になったと言われる現代社会の中でも少しずつ、確実に「人を助けたい」という想いがつながり、救われる命が増えている。大災害に見舞われた地域でも人々の協力によって救われた命も数知れない。
こんな地域の人々の想いを引き継ぎ、救える命を救うことは救急医だからこそできる社会貢献だと思う。
社会の縮図である救急外来で、現代の社会的課題と日々対峙しながら働く救急医は、患者のみならず地域や社会を「診て」いる。平時、災害時、如何なるときも地域または日本のセーフティーネットとして社会に大きく貢献できる仕事。それが救急医。