救命救急治療
皆さんは救急にどんなイメージを持っていますか?
ひょっとすると「救急医って各科専門医に患者さんを渡す窓口の医師であり、最後まで患者さんを見ない」といった誤ったイメージを持っている人がいるかも知れません。もちろんそんなことはありません。
救急医のやりがいの1つは重症患者さんの命を救うため、初期治療から集中治療、そして退院まで自分たちで決めた一貫した治療を行うことが出来る点です。
患者さんの高齢化が進み、一人の患者さんが多くの合併症を持っていて、これまで以上に多くの科が協力して他職種連携医療を行う必要が出てきました。しかし、実際の医療はそれに反比例するように各科専門医は自分たちの専門性を高めています。もちろん学問として専門性を高める事は必要です。
Precision Medicine
2015年1月にアメリカのオバマ大統領は一般教書演説の中で「Precision Medicine」の重要性について語りました。
Precision Medicineの正確な日本語訳はまだ確立していないと思いますが、簡単に言えば個人の遺伝情報、生活環境など個人の違いを考慮した治療を患者さんに併せて行うことを意味します。
実際に救急医療現場でよく見かける敗血症治療でも患者さんのステージに併せて行うPrecision Medicineが注目されつつあります。
これからの医療は各患者の個人の違いにフォーカスを合わせた個別化医療が進んでいくのです。その中でより専門性の高い医療技術や知識も必要となって行くと思います。
しかし、皆さんが医師となり最初に患者さんをみることになる現場で、本当にこれらの高い専門性が重要となるでしょうか?
皆さんが夜中の2時に当直していて診る「ぐったりとした80歳の発熱高齢者」にこのような高い専門性はまず必要ありません。
必要なのは致死的な疾患(髄膜炎、腹膜炎、虚血性疾患など)が隠れていないかしっかりと見極め、目の前で困っている80歳の高齢者に付き添う家族を笑顔で安心させ、患者さんのために適切な治療を行うことなのです。
我々救急医はこのような患者さんを最初に診断・治療する責務をもち、さらにこの患者さんが複数の疾患を持っていたとき(例えば、肺炎、脳梗塞、腸閉塞など)、各科の医師らと協力して、そして彼らを統括する主治医となり、その患者さんが重症ならばERからICUへ移動させて患者さんの治療を最後まで行うのが仕事なのです。
現在の医療の主流である「木を見て森を見ず」に固執することなく、入院から退院まで、そして軽症からICUに入る必要がある重症まで治療できる救命救急医療をぜひ私たちと一緒に実践しませんか。
医師として学ぶべき重要な事はすべて救急外来を訪れる患者さんが教えてくれます。